介護事業所の経営と労務管理

介護の24時間サービス(10.07.28)

 高齢者賃貸住宅を経営している方と話をしていて、ある家族の介護の例が話題となった。

★介護保険が始まったころは「これで家族介護の呪縛から解き放たれて社会的介護の時代が来る」と思っていた。

★しかし、数年前からの介護利用抑制施策によって「同居親族」が居る過程での介護サービスが抑制され、家族の負担が大きくなり介護への呪縛が始まった。

★呪縛にとらわれることによって、生活そのものが破綻しつつある。

 

 「何とかならないか」と話題になったが、厚生労働省の介護の課題展望では、「介護の24時間対応サービス」や「介護認定の簡素化」「利用上限の見直し」などが提起されている。

 費用増加問題もあるが、制度の本質論からあり方について検討をしてもらいたい。

 

■昨日、小豆島に出向いて仕事をした。24時間サービスを考えていて、目の前の有名な「24のひとみ」の像に目が向いた(少し意味が違うが、24つながりで)。

24のひとみ.jpg

介護保険の社会的役割 家族が「受容すること」への関わり(09.04.25)

 先日(平成21年4月18日)、地元で介護をしている妻が夫を殺そうとし、その後、自らの命を絶った事件がありましたが、本当に類似している事件として、元タレントの清水由貴子さん(49)の「自殺」があり、世論が改めて「家族の介護」の厳しさについて注目されています。
 介護保険の施行の基本理念が「家族介護から社会的介護へ」と言われ、「クオリティ・オブ・ライフ」(QOL)の追求をすることが宣言されていました。


 多くの解決すべきことが介護保険制度にはあります。しかし、介護保険制度が施行されて10年を経て「介護」は、明らかにイメージが変わりました。
 35年前に、私の祖母が介護を必要とする状態となり、当然のこととして「嫁」である母親が、雑貨店の店主として経営をしながら3年ほど家族介護の担い手となりました。注文を受けたらバイクで酒を配達したり、店番をしたりしながら、介助し食事の世話をしていました。
 今から思い出すと本当に厳しい様相でした。だんだんと家の中が暗くなり「帰りたくない」と思うようになりました。
 当時、私は高校生でしたが、母親が父親に「町役場に相談したら『ヘルパー』さんという人が来てくれるらしいが、どうだろう」と話をしていたのを思い出しました。
 父親は一言。「そんな、ふが悪い(格好の悪い)ことは出来ない」と却下。


 その後、母は近所の気安い知り合いの主婦の方の手を借りながら何とか3年間の介護を続けました。5月の連休の暖かい日に祖母は母親に看取られながら自宅で息を引き取りました。
 介護の2年目に入った頃は、祖母は今で言う認知症状態でしたので、私は恐ろしくて近づけず「早くいなくなれば・・・」と思っていたのを思い出しました。


 今日では、とりあえずヘルパーさんにお願いすることは「恥ずかしいこと」という風潮は無くなりました。
 しかし、介護を必要とする家族が家の中に生まれた時には、その事実を受け入れる「受容」をすることは、肉親にはとても悲しく、厳しく、暗い穴に落ちるような気がするのは痛く分かります。
 その「受容」していくプロセスが介護サービス事業者やケアマネに求められる最初のプロセスなのでしょうか。地元の事件と清水さんの事件は、そう教えているように思います。


 清水由貴子さんの若い頃の報道が次々と流されていますが、本当に身につまされます。
 あらためてご冥福をお祈りします。

「家族構成の変化」(09.04.22)

 今朝のNHKの「生活ほっとモーニング」も、昨日に続きシリーズとして介護保険を取り上げていました。
 テーマは「シリーズ10年目の介護保険(2) 想定外の家族たち」で、介護保険制度が制度設計をする段階では予測していなかった家族構成になっていることを特集していました。
 ゲストには、昨日と同じ洋画家の城戸真亜子氏と、新たに淑徳大学准教授で元ケアマネージャーの結城 康博氏が参加していました。
 今回の注目点は、介護保険制度が予測しきれていなかった家族構成として、①未婚者の増加によるシングルで父母の介護をすること、②お互いが介護を必要とする者同士という意味で、老老介護や認知症どうしの認認介護の事態も広がっていることを指摘していました。
 しかし、私は若干、違和感を覚えました。
 実は、介護保険施行時に、依頼されて「これからの介護」ということで、その中で家族構成の変化についての予測について調べて話をしたことがあります。
 その時に「老老介護」として高齢の親を介護する高齢の子供というシチュエーションは広がることを話題にしたことがありました。当時から、認識され人口統計資料も踏まえて認識はされていたはずで、最近分かったというものでは無いはずです。
 「認知症」という用語は2004年に厚生労働省の用語検討会によって言換る報告が出されたのが始まりです。認認介護という組み合わせも実態的には、以前から有ったはずです。
 問題は、従来は大家族で生活をしていたのですが、少子高齢化の進展で、家族構成が核家族化し、小規模化したことで介護を必要とする人同士が同居して生活をせざるを得ない事態が広がっていることでしょう。
 介護保険の施行前後の説明では「家族介護から社会的介護へ」との理想で介護保険制度に取り組んできたと思いますが、その後に介護保険制度の利用抑制施策によって「家族介護」を基本に仕組みを考えていくことが求められることになり、実質的には介護保険の基本理念が異質なものになってきたように実感します。
 それにしても「家族構成の変化」の論点は、今後の介護のあり方を考えるためには重要なベクトルであることは間違いないことです。
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