介護事業所の経営と労務管理

「介護職員処遇改善交付金」の話題(09.11.18)

 昨日、介護施設の管理者の方と話をしていたところ「2年半後の介護職員処遇改善交付金の将来はどうなるの」との話題がでました。

 話題の柱は二つ。

 一つは、当初2年半だけの制度とされていて、「不安定」と思っていたが、「長期に継続」との方向性が報道されている。しかし、それだと介護職と他の職種との差違が固定化することになり、それも問題という意見。

 もう一つは、民主党の政策は、「介護報酬の改定であったはず」なのに、「介護職員処遇改善交付金」として対応されるのであれば、上記と同じく、介護職と他の職種との差違の固定化になってしまうので、問題という意見でした。

 民主党のマニュフェストによれば「介護報酬の改定」ということですので、来年度に向けて何らかの抜本的な改定方針が出されるかもしれません。

 ここは今後の動向をしっかりと注目することが必要です。

10万人の雇用創出を目指す「緊急雇用対策」(09.11.01)

■介護資格の受講費や取得までの給与を期限付きで国費負担

 国内の厳しい雇用情勢に対応するため、政府は10月23日、首相官邸で緊急雇用対策本部(本部長 鳩山由紀夫首相)の会合を開き、「緊急雇用対策」を正式に決定しました。
 対策の第は二つです。第1の柱が、困窮者や新卒者などへの「緊急的な支援措置」と、対策の第2の柱は、将来的な成長が見込まれる介護など3つの重点分野における「緊急雇用創造プログラム」の実施という2本柱の対策です。
 特に介護では、働きながらヘルパー2級や介護福祉士の資格取得を目指す「介護雇用プログラム」の推進が注目されるところです。
■対策の内容

  第1は、失業者や離職者が働きながら資格を取れるように、「介護雇用プログラム」を設ける。
 これは、介護福祉士やヘルパー2級などの資格取得を目指す失業者・離職者を、介護事業所が1年から2年の有期雇用契約で受け入れた際に、資格取得の受講料と雇用中の賃金を国費で負担するものです。
 第2は、介護人材の確保策として、全国のハローワークで介護分野の求人開拓を重点的に実施することです。
 第3は、介護サービスの基盤を拡充し、雇用の受け皿を増やすことです。

■厚労省の緊急雇用対策の資料です。(クリックするとダウンロードできます)⇒  kinkyu.pdf

認知症と独居高齢者の加算制度を適用する場合の「条件」(09.06.09)

 少し遅くなりましたが、上記の「条件」について高松市役所の介護保険課に出向き、担当者に「条件」を明示したことをお知らせします。

 担当者は「御社が自主的に考えている条件ですので、これを実施してください」と言うばかりで、「この条件で、良いか否か、ご判断の上文書にてご回答いただけるようお願い申し上げます。」という要望については、言を左右にして回答を約束しませんでした。

 その後、上司が出てきて「条件」を受け取り「県とも相談して回答」という言葉を得ました。その後、行政側からの正規の回答が得られていませんが、一定の期日を経て確認を実施する予定です。

 当社が高松市に提示した加算の「条件」を再掲示しておきます。 

 香川県ケアマネジメントセンター株式会社では、認知症、独居高齢者加算は、下記のいずれかの条件を満たすものを算定することとする。

 

1.自宅への訪問回数が月2回以上ある場合

2.本人もしくは家族、利用している事業所との連絡調整のため、頻繁に電話での対応が必要である、もしくは長時間になる場合

3.認知症、独居であるため必要なサービスが変更され、サービス担当者会議を開催した場合

 

 なお、これらにかかる内容についてはすべて、居宅支援経過、及びサービス担当者会議等に記載するものとする。

「介護職員処遇改善交付金」(仮称)の概要が発表される(09.06.03)

 上記の制度が、いよいよ動きだすことになりました。

 介護職員の処遇改善のための交付金の骨格部分が見えることになりました。

kaigosyogu.jpg この交付金は、介護職員の賃金の確実な引き上げをめざした制度で、2009年度補正予算に盛り込まれたものです。処遇改善に取り組む事業者に対する助成措置として実施されます。

1.実施主体は都道府県であること。基金を創設して国保連を通じて交付金が事業主に支払われれます。

2.支給金額は、事業所に支給される介護報酬総額に対して、サービス毎の人件費比率を乗じて計算されます。

(交付率等の詳細は、 介護職員処遇改善交付金(仮称).pdfを参照)

3.今後の予定は、7月に事業所への説明会を実施し、8月に交付金申請の受付を開始、10月のサービス分から交付金の算定対象となり、11月の請求分とあわせて12月に交付金が実際に事業者の口座に振り込まれることになる見込みです。

4.交付金を受けるためには、事業者は処遇改善計画を作成し都道府県に提出することが求められます。

 事業主に求められるのは、①改善計画の作成と、②計画書の介護職員への周知です。

 この「計画」がポイントのようです。

 「計画」では、交付金の月当たりの見込額や職員一人当たり野改善見込額(月額)や、基本給の増額、手当の新設、賞与の新設などの個別的方策を記載することが求められるようです。同時に、前年度の支払い実績を比較する情報の報告が求められる見通しです。

 これにあわせて、人事制度の整備、昇給、昇格用件の明確化などの処遇全般、人材育成環境の整備、出産・子育て支援などが求められます。

 なお、翌年度からはキャリアパスに関する用件が満たされなければ減額措置があるようです。

加算制度の適用基準を市に確認する予定です(09.05.21)

高松市.jpg

 先日、このHPにて、認知症と独居高齢者の加算制度を適用する場合の「後出し条件」の問題について書きました。

 当社として検討をした結果、後々の行政の調査時に「後出し条件」の「具体的な条件」が明示されて、遡って返納を求められるようなことを回避し、安心して業務を執行するために、行政側が明示しないならば当方から考えている条件を明示し、その妥当性について文書で回答するように求めることにしました。

 さっそく、当社のケアマネージャーの一人が、保険者である高松市宛に文書を作成しました。

 25日付けで提出を予定していますが、次の文面を予定しています。

 

 

 

高松市介護保険課御中

平成21525

香川県ケアマネジメントセンター株式会社

 

 

 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。さて、先日の高松市指定居宅介謹支援事業者連絡協議会において、認知症、独居高齢者加算につきまして、算定の際は居宅介護支援の手間を勘案するようにと指導がありましたが、当事業所におきましては社内で統一した以下の条件を満たすものを算定する事にしたいと考えております。この条件で、良いか否か、ご判断の上文書にてご回答いただけるようお願い申し上げます。なお、この条件は、高松市、及び香川県が行う実地指導及び監査の際に当事業所が指導先に掲示するものといたします。お忙しいことと存じますが、よろしくご検討の程お願いいたします。

 

 

 香川県ケアマネジメントセンター株式会社では、認知症、独居高齢者加算は、下記のいずれかの条件を満たすものを算定することとする。

 

1.自宅への訪問回数が月2回以上ある場合

2.本人もしくは家族、利用している事業所との連絡調整のため、頻繁に電話での対応が必要である、もしくは長時間になる場合

3.認知症、独居であるため必要なサービスが変更され、サービス担当者会議を開催した場合

 

 なお、これらにかかる内容についてはすべて、居宅支援経過、及びサービス担当者会議等に記載するものとする。

 

加算制度が、「条件付き」に!(09.05.18)

 「介護職員の待遇改善」の錦の旗が、早くも変色し始めています。

 居宅介護支援事業における「認知症加算」と「独居高齢者の加算」制度についての行政の説明会では「単純に認知症や、独居だからということで加算申請は出来ない」と説明がありました。

 「介護の手間がかかっているから加算をつけているのだから、手間がかかっていないのなら加算を申請出来ない」とのことでした。

 いつも思うのですが、行政の手続きで介護保険制度ほど「口頭による通達」と「後出しジャンケン」がまかり通っている領域は珍しいと思います。

 

①不思議な「口頭による通達行政」

 報酬を受け取る基準となるべき事項が、集団説明の場における「口頭連絡」でことが済まされるということ自体が正確さを期すべき行政のあり方としておかしいものです。

 行政の指導は、再現性のある文書で行うのが原則です。

 認知症の方や独居の方のサービスを提供している場合は「加算出来ます」と明示されているにも関わらず、その条件がありました。「手間がかかっていない場合は、加算申請出来ません」ときました。

 では、「手間がかかっている」かどうかの基準とは何なのかがについては、明確に具体的な説明が有ったかというと、これが全く不明確。

 情報が明確に組織的に普及されるためには、集団指導の口頭連絡だけでは不可能なことは当たり前のことです。

 この点が、非常に問題の大きなポイントの一つです。

 

②公明正大さに欠ける「後出しジャンケン」的指導

 介護保険制度が始まった頃に「毎月訪問」の基準も「特段の事情があるならば、翌月でも可能」との説明が行われていました。

 しかし、実地指導に来た職員は、調査のふたを開いて「特段の事情」とは「単に訪問したが不在だった」は違うという見解を説明されてしまいました。

 それなら、そうと早くから明確に説明をしてくれていれば、その基準で行動をしたのですが、実地指導は、後出しジャンケンそのものでした。

 誰が見ても分かる明瞭な基準を出さず、調査の段階で減算となる基準を明示するなどというのは、本当にフェアな行政活動とは思えません。

 今回の「介護の手間がかかっているかどうか」も要注意です。

③「介護の手間」を独自の3基準で検討

 県ケアマネとしては、①2度以上訪問した場合、②新たなサービスを利用するようになった場合、③頻繁な連絡を取った場合という3つの基準としてはどうかと論議しました。

 これを保険者であるところの市の介護保険課宛に質問をしてはどうかということになりました。

 文書で質問し、間違っているなら文書で回答せよと要望する予定です。

今後の介護報酬と制度の改正を考える(09.05.09)

(1)制度は5年ごと、報酬は3年ごとに見直し
 介護保険は、制度見直しが5年に1回、報酬見直しが3年に1回実施されます。2005年に制度改定、2006年に報酬改定がありました。今年、2009年は報酬改定が実施されましたが、次は、2010年が制度改定の年となります。
 介護報酬の改定は、法改正を必要とするものではありません。審議会(社会保障制度審議会)の諮問を通じて厚生労働大臣が決定する公共料金の一つだと言えます。

【改正の年】

報酬

制度

2009

2010

2012

2015

2015

 2015年は、制度と報酬の両方の改定の年となりますので、相当大きな改定が行われる可能性を持っています。
 過去の事例では、2005年の制度改定で「介護予防」の仕組みが導入され軽度の介護度の利用者が介護保険制度から介護予防に以降する制度が打ち出され、それに合わせて翌年の2006年に介護報酬の改定が実施されたことは記憶に新しいことです。
 この改定によって、実質的には訪問介護や居宅介護支援事業などの事業収益は大打撃を受けました。

 

(2)医療報酬の関連も重視する
 もう一つの側面は、医療との連携の側面です。
 医療行為や調剤などに対し、国が定める価格表を「診療報酬」といいますが、この診療報酬は、おおむね2年に1度改定されます。
 当面2010年、2012年と改定が実施されることになります。
 介護保険制度の関連では、2012年の報酬改定がどのようになるのかが注目されていますが、医療報酬との調整が焦点となることは間違い有りません。

 

(3)2015年に向けて大きな曲がり角に
 従って、2012年に向けては医療との連携や医療との棲み分けについて見直しの手が加えられる可能性が大きいと考えられます。
 また、その後の2015年に向けた3年間で、介護保険制度のさらなる抜本的な改正が検討される可能性があります。
 考えられるキーワードは、
① 介護保険の被保険者の年齢を現在の40歳以上から20歳以上へと引き下げる可能性があること。
 このことによって、介護保険料を支払う母数が拡大され、介護財政の基盤が強化できることを狙うものと思われます。
② 上記の①ともあわせて障害者介護を介護保険制度に統合する可能性があること。
 若年者が介護保険料を支払うことになれば、「加齢にともなう給付」としての介護保険制度では、若年者は保険料だけを徴収されることになり、保険制度として保険と給付の統一が実現できないことになります。
 したがって20歳以上の若年者からの保険料徴収と障害者介護との統合は不可分一体の関連性があると言えます。
③ 介護保険の重度化シフトということで、介護度2までの軽度については、介護予防に移行する可能性があること。

 

 いずれにしても、これからの数年間の対応が将来の方向性を決めると言えます。制度と報酬の改定という重要な経営環境の変化には敏感にならざるを得ません。

シリーズ10年目の介護保険(1)介護報酬改定の波紋(09.04.21)

 本日、NHKの生活ほっとモーニングで「シリーズ10年目の介護保険(1)介護報酬改定の波紋」をテーマにした放送がありました。

 洋画家の城戸真亜子氏、立教大学教授の服部万里子氏をゲストにしていました。

 番組では、認定調査における不安と不満を取り上げるとともに、介護報酬の改定によって訪問介護事業所が特定事業所加算をおこなうことで限度額ギリギリで介護を受けていた利用者の負担増となる問題を取り上げていました。

 特に、認知症利用者等の限度額ギリギリまで利用している方が、今回の特定事業所加算を取ると、その分全額自己負担となる場合は、「生活そのものを事業所加算分で破綻させかねない」ということで加算を選択しないことと苦渋の決断をした事業所の事例を紹介していました。

 服部教授は、①利用限度額の上限の見直し、②研修費用や介護福祉士の賃金については、介護報酬ではなくて直接に事業所に支給する方法を検討すべきとの主張をしていました。

 仕事の手を止めて、聞いておりましたが、やはり認定調査と介護報酬の問題は、社会的に注目を浴びている重要な事項であることが浮き彫りになっています。

ページトップへ