介護事業所の経営と労務管理

「実務に役立つ介護書式集」 発刊へ(09.09.08)

最近、このブログの更新が滞りがちでしたが、実は、8月上旬から日本法令より上記のような「実務に役立つ介護書式集」の作成依頼があり、9月末頃の発刊が予定され、その資料集めと作成におわれる日々でした。

 

通常業務をしながらの作成でした。お盆休みや土日を軸にして1カ月足らずで対応したことになります。

 

改めて介護事業所に足を運び、実際に使っている書式を見せてもらって思ったのですが、「行政に出すため(見せるため)の書式」というものは味気ない。それに比べて、実際に「業務で使うための書式」というのは非常に生々しく、工夫がこめられているのです。

 

この書式集は、①業務書式、②労務管理書式、③許認可様式の3本柱となり、それぞれ、実際に使われている、即戦力の書式が濃密に詰まっているというものにして一風変わったものが出来ればと願って対応をしたものですが、できあがりはいかがなものになるか、お楽しみにお願いします。

介護に関するトラブル 「有料老人ホームの問題」(09.05.25)

 日本法令の編集部からの依頼で2009年5月23日に大阪の弁護士さんと面談し、介護業界における訴訟やトラブルについての実態について意見交換を致しました。

 意見交換の最後に「特養や老健などの入所待ち状態の施設において『顧客満足の追求』が、運営上では『不要なコスト』と位置づけている経営者もいる」と説明したところ、驚きを持たれました。

 顧客に喜ばれないのでは、顧客から敬遠され、ひいては選ばれなくなるというサービス業における市場とサービスの質の関係性は、介護業界では直接的ではない状態(つまり「お世話になっている」等)が根強い状態にあることです。

  特養は38万人を超える空き待ち状態なので、これ以外で24時間サービスに対応する有料老人ホームを選択する場合が急増しているようです。私は「この分野では『顧客満足』の追求の姿勢が問われる時代になっているのではないか」と意見を述べました。

 早速、5月24日の朝刊の朝日新聞では、有料老人ホームの入居にあたって、サービス、料金などのトラブルが急増していることが報じられていました。

 地方の有料老人ホームでは、当初に支払う入居費用が不要であったり比較的少額のところが多いのですが、都市部では1000万円を超えるのが常識のようです。

 それだけに「払った費用に見合うサービスレベルかどうか」に関心が集中することになります。

 朝日新聞の記事は下記です。

 

有料老人ホーム.jpg http://www.asahi.com/national/update/0523/TKY200905230252.html

いまだに「虐待」と「身体拘束」が?(09.05.08)

 地元の介護事業者の会合で「虐待」と「身体拘束」が話題となりました。
 介護事業に従事するためにヘルパー研修を受けると、必ず施設実習があります。

 

 この施設実習を受講した者から、必ず「幻滅」の声が聞こえるという話題でした。
 せっかく「人の役に立ちたい」と思ってヘルパーになろうとしたのだが、施設実習では、陰湿さのある「虐待」と「身体拘束」を目の当たりに見てしまい、心が萎えてしまうということでした。
 会合では「いまだに『虐待』と『身体拘束』をしている施設が残っているのか」と驚きの声が起こりましたが、これが「少数派」とは思えない状況にあることが問題として話題に。
 ある参加者は、大規模施設で目の当たりにしたこととして「身体拘束でもしないと手が回らないし、虐待と取られても、おむつ交換のために一斉におむつを脱がせてまわったり、入浴の準備のために裸でたたせなければ仕事が回らない」という実態だったそうです。
 また、食事の介助では、一人に食事介助をしていると、「時間と対応する人数を考えるとそれでは間に合わない」と職員に叱責され「順番に並べて次々と口の中に放り込む」ように実習指導があったようです。

 

 利用者本人が訴える事無く、家族も知らないところで行われている場合は、闇の中ということで紛争とはならないことになります。家族も「お世話になっているから」ということで知らないふりということが多いようです。
 将来の介護を考えると改善すべき問題の一つだと思います。

 

 議論では、現場の実態を「経営幹部が知っていたかどうか」が話題となりましたが、目の前の入居者への対応のためには、仕方がないという悪循環が繰り返されていることが問題ではないかと話題になりました。

 

 悪循環を絶つためにも「何のために経営をしているのか」「何のために働いているのか」という根本の基本理念に光をあてていくことから改善が始まると思います。
 この点では、大規模な施設であろうがなかろうが、十分に注意すべきことでしょう。

  

 なお「虐待」については、利用者の家族(それも直系尊属)による「虐待」と介護労働者による「虐待」とは精神構造が少し異なる点も、今後の研究課題ではないかとの議論もありました。

 この点は、また、日を改めて検討していきたいと思います。

介護保険の社会的役割 家族が「受容すること」への関わり(09.04.25)

 先日(平成21年4月18日)、地元で介護をしている妻が夫を殺そうとし、その後、自らの命を絶った事件がありましたが、本当に類似している事件として、元タレントの清水由貴子さん(49)の「自殺」があり、世論が改めて「家族の介護」の厳しさについて注目されています。
 介護保険の施行の基本理念が「家族介護から社会的介護へ」と言われ、「クオリティ・オブ・ライフ」(QOL)の追求をすることが宣言されていました。


 多くの解決すべきことが介護保険制度にはあります。しかし、介護保険制度が施行されて10年を経て「介護」は、明らかにイメージが変わりました。
 35年前に、私の祖母が介護を必要とする状態となり、当然のこととして「嫁」である母親が、雑貨店の店主として経営をしながら3年ほど家族介護の担い手となりました。注文を受けたらバイクで酒を配達したり、店番をしたりしながら、介助し食事の世話をしていました。
 今から思い出すと本当に厳しい様相でした。だんだんと家の中が暗くなり「帰りたくない」と思うようになりました。
 当時、私は高校生でしたが、母親が父親に「町役場に相談したら『ヘルパー』さんという人が来てくれるらしいが、どうだろう」と話をしていたのを思い出しました。
 父親は一言。「そんな、ふが悪い(格好の悪い)ことは出来ない」と却下。


 その後、母は近所の気安い知り合いの主婦の方の手を借りながら何とか3年間の介護を続けました。5月の連休の暖かい日に祖母は母親に看取られながら自宅で息を引き取りました。
 介護の2年目に入った頃は、祖母は今で言う認知症状態でしたので、私は恐ろしくて近づけず「早くいなくなれば・・・」と思っていたのを思い出しました。


 今日では、とりあえずヘルパーさんにお願いすることは「恥ずかしいこと」という風潮は無くなりました。
 しかし、介護を必要とする家族が家の中に生まれた時には、その事実を受け入れる「受容」をすることは、肉親にはとても悲しく、厳しく、暗い穴に落ちるような気がするのは痛く分かります。
 その「受容」していくプロセスが介護サービス事業者やケアマネに求められる最初のプロセスなのでしょうか。地元の事件と清水さんの事件は、そう教えているように思います。


 清水由貴子さんの若い頃の報道が次々と流されていますが、本当に身につまされます。
 あらためてご冥福をお祈りします。

介護事故の対応方針の具体化が大切(09.04.21)

 ある訪問介護サービス中の介護事故の記事を参照していて興味深かったことですが、「介護事故は現象的には『個人のミス』だが、それを発生させる『環境リスク』と、ヘルパー個人の要因があり、特にヘルパー個人の行動や言動で何とか解決したいと小手先の対応をしたことによって、いっそう事故発生後のトラブルが拡大する傾向がある・・・。」と書いていました。
 訪問介護は、ヘルパーが頻繁に担当替えもあり、自分自身が不慣れな利用者宅でサービスを単独で実施しなければなりません。
 「ハインリッヒの法則」というものがあります。これは、労働災害における経験則として定式化された有名なものです。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというものです。
 これを在宅への訪問介護で当てはめると、300の異常が発生し、その中に30程度の事故が発生し、その頂点には重大な人命にもかかわる事故が発生していると考えられます。
 介護における事故を防止するためにも介護事業者は仕組みを見直す必要がありますが、私流に展開をすると、次のような留意点や実施方針となります。

■介護事故対応方針

①「ヒヤリハット」の事例交流の方法などで、予見しうる異常や事故を事前に研究・交流し教育すること。
②軽微な異常であっても組織的に事業所内に報告・相談・連絡を展開し、個人的な判断で対応をしないことを徹底すること。
③異常や事故の発生に際しては、まず、被害者の救済を第一とすること。
④責任の所在は日常から明確にし、責任のなすりあいは絶対に戒めること。
⑤原因調査は、責任探しというより「再発防止」の姿勢を大切にすること。
⑥利用者とヘルパーの間の何らかの「病的依存」関係がないかお互いに注意しておくこと。
 こうした留意事項を明確にして在宅介護は実施されるべきでしょう。

痛ましい事件 「介護疲れか?妻が夫の首絞め、その後自殺」高松(09.04.21)

 昨日の新聞で報道されましたが、私の地元高松で痛ましい事件が発生していました。

 新聞報道の概要は、「18日午後11時10分頃、高松市香川町浅野の男性(73)が、1階和室で、首にひもを巻かれて倒れているのを、離れに住む長男(45)らが見つけ、110番。同男性は首などに10日間のけが。高松南署は、妻(67)が約1時間前に「夫を殺して、自分も死ぬ」とのメールを孫娘の携帯電話に送信し、行方がわからなくなっていたため、付近を捜索。19日午前8時頃、自宅の北東約3キロの池に浮いていた・・・。

 発表によると、同男性は妻と2人暮らし。男性は1月下旬に脳 梗塞 ( こうそく ) で寝たきりとなり、妻が介護をしていたという。

 自宅にあった妻のバッグから、「介護に疲れました。2人で遠い国へ行ってきます」という内容の遺書が残されていたそうである。

 状況は全面的には分かりませんが、1月から4月と3カ月程度の比較的短い期間に事件となっており、介護が始まる初期の事件です。実態を受容できない家族の苦しみの表れと思います。

 お悔やみ申し上げます。

ヘルパーの横領事件(09.04.16)

 介護保険が施行されて10年の歴史の中で、コムスン問題などの介護事業経営者の不祥事が世間を騒がせましたが、その一方で、職員自身の不祥事が多いのも事実です。

 「東京・足立区のヘルパーの女が、介護を担当していた認知症の男性の預金口座からおよそ10万円を勝手に引き出したとして警視庁に逮捕されていた」「男性の口座にはあわせておよそ2000万円の使途不明金が発見され、女が横領した疑い」と報道しています。

 在宅での訪問介護は「密室」での仕事すので、ヘルパーの資質に依拠せざるを得ません。

 こうした不祥事は、介護業界から一掃させなければなりません。

ページトップへ