介護事業所の経営と労務管理

「要介護認定等の方法の見直しに伴う経過措置について」を考える(09.04.25)

 平成21年4月17日に厚生労働省は「介護保険最新情報」Vol.80を発表しました。

 本文は、  SVOL80.pdf ←をクリックするとダウンロードできますので、是非ともご一読下さい。

 厚労省としての対応方針や質疑応答があります。

 この内容を読んでみて、私なりに思うことは、

 

新方式は見直さず、短期的な「経過措置」に

①今回のこの措置は、期間は不明ですが「経過措置」であって、厚生労働省としては、新しい要介護認定の方法は、将来的に実施するという姿勢を示していること。

 文中でも「要介護度は病気などの重傷度ではなく、必要とされる介護の量で決まります。これまで通り、『要支援1~2、要介護1~5』の7段階であり、要介護度の仕組みそのものが変わるわけではありません。」と述べています。

 「要介護度が変わっても従来どおりを選ぶことができます」という「ご協力のお願い」が添付されていますが、表題と真意は別のことです。当分(例えば、「次の介護認定までは」等)は、従来より介護度が下がる場合は、従来の介護度としますが、いずれにしても「必要とされる介護の量」で認定をする基本方針は変えない、ということです。

 制度改正の歴史を見ると、制度激変のときは激変を一定期間は緩和しながら、「慣れ」てきたら(ガスが抜けたら)おもむろに移行してきた歴史がありました。

 

新規の認定者は新方式、事実上の二つの認定方式が併存

②もう一つは、平成21年4月以後に新規に介護認定を受ける方は、こうした「経過措置」は、そもそも「従来の介護度」はありませんので、適用するという仕組みが成立しませんので新しい方法がそのまま適用されることを十分に理解して、介護認定に挑む準備をしておく必要があることです。

 質疑応答でも「新規認定者については、新たに介護保険の対象となる者への認定であり、従前の要介護度との比較ということではなく、一度判定された要介護度より重度または軽度の要介護度を希望する場合には・・・・審査請求の手続きをご利用いただくこととなる。・・・」と回答しています。

 つまり新規に認定申請をする者は「経過措置」の対象とはならないので不満があるなら「どうぞ審査請求をしてください」という文章です。

 しばらくの間は、介護認定には事実上の二つの基準(ダブルスタンダード)の併存状態となります。だからこそ、上記の①で指摘しているように「経過措置」は、そうそう長期にわたることはあり得ないことになります。

 新たに認定を受ける方は、実態からあまりにも外れた軽度の認定とならないように、事前の主治医との打ち合わせをきちんとすることや、認定調査員に日常生活で困っていることの具体的な内容や頻度を詳しく伝える努力が大切になります。

 

 本書で指摘した「介護認定の方法」の変化の経過や方向性は、残念ながら懸念している方向で変わりが無いようです。

シリーズ10年目の介護保険(1)介護報酬改定の波紋(09.04.21)

 本日、NHKの生活ほっとモーニングで「シリーズ10年目の介護保険(1)介護報酬改定の波紋」をテーマにした放送がありました。

 洋画家の城戸真亜子氏、立教大学教授の服部万里子氏をゲストにしていました。

 番組では、認定調査における不安と不満を取り上げるとともに、介護報酬の改定によって訪問介護事業所が特定事業所加算をおこなうことで限度額ギリギリで介護を受けていた利用者の負担増となる問題を取り上げていました。

 特に、認知症利用者等の限度額ギリギリまで利用している方が、今回の特定事業所加算を取ると、その分全額自己負担となる場合は、「生活そのものを事業所加算分で破綻させかねない」ということで加算を選択しないことと苦渋の決断をした事業所の事例を紹介していました。

 服部教授は、①利用限度額の上限の見直し、②研修費用や介護福祉士の賃金については、介護報酬ではなくて直接に事業所に支給する方法を検討すべきとの主張をしていました。

 仕事の手を止めて、聞いておりましたが、やはり認定調査と介護報酬の問題は、社会的に注目を浴びている重要な事項であることが浮き彫りになっています。

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