介護事業所の経営と労務管理

「介護職員処遇改善交付金制度の継続が困難」との報道(11.10.14)

 本日の四国新聞1面のトップ記事として添付ファイルのように「介護職員処遇改善交付金制度の継続が困難」との報道があります。
 案としては大企業の健保組合の保険料を引き上げて介護保険財政に充当しようという方針のようです。
 こうして、政府の思惑としては「介護報酬の引き上げ」で対応したいということのようです。
 まだ、決定には至っていませんが、各方面で怨嗟の声があがりそうです。

 

 

20111014_kaigo.jpgのサムネール画像【本文紹介】

四国新聞 2011(平成23)1014(金曜日)

大企業社員の保険料増 介護給与維持で検討

 厚生労働省は13日、介護職員の給与水準を維持する財源を確保するため、大企業に勤務するサラリーマンについて介護保険料引き上げの検討に入ることを明らかにした。介護サービスの一部利用者の負担増も検討課題とする。同日の社会保障審議会介護保険部会で示した。

■利用者負担上げも

 厚労省は、所得水準が比較的窩いとされる大企業のサラリーマンの保険料負担を増やした場合、2015年度で最大約1600億円を捻出できると試算している。

 現行制度では、40歳以上65歳未満は、加入する医療保険の加入者数に応じて介護保険料を負担。加入者の所得水準がより低い全国健康保険協会(協会けんぽ).や国民健康保険には国が補助している。新制度では、収入に応じて負担割合を決める「総報酬割」を導入して大企業サラリーマンが加入する健康保険組合の負担を増やすことで、国庫補助はなくす方式を検討する。

 政府は、他業種に比べて給与水準が低いとされる介護職員の救済策として、政府は09年に「処遇改善交付金」を創設。09年度補正予算で約4千億円を計上し、職員1人当たり月平均で15千円を支給している。

 交付金は来年3月で期限切れとなるが、厚労省は職員の給与水準は依然低い状態にあるとして、交付金に相当する財源を確保する必要があると判断。年末までに財源の調達案をまとめ、次期通常国会への関連法案提出を目指す。

 厚労省によると、処遇改善交付金と同様の効果を上げるには、年間約1900億円が必要となる。

 介護サービス給付の見直.しでは、要介護度が低い「要支援」の認定を受けている利用者や、高額所得者の負担割合増が検討されており、厚労省は次回以降の介護保険部会で具体案を示す方針。

■交付金継続困難に

 厚生労働省が13日、大企業サラリーマンの介護保険料の負揖増などについて検討に

入ったのは、これまで時限的に介護職員の給与水準を支えていた処遇改善交付金の継続が、東日本大震災の復興優先などによって難しくなったためだ。

 ただ、こうした負担増は、改正介護保険法(6月成立) を策定する過程で昨年提案されたが、民主党の反対で実現しなかった経緯がある。今回も調整は難航しそうだ。

 政府内では、介護職員の給与は介護保険の枠組みで賄うのが筋だとして、交付金の継続に否定的な見解が大勢。厚労省は、交付金をなくして介護報酬により職員の給与水準を現状並みで維持するには、来年度の報酬改定で2%の引き上げが必要となり、公費投入が国一と地方でそれぞれ500億円必要になると説明。しかし、こうした追加公費は財政的に困難として、現役世代を中心に負担してもらう.ことを選択したとみられる。

 

【ズーム】介護職員処遇改蕃交付金

 自公政権の下で、他の産業に比べて大幅に下回っている介護職員の賃金を引き上げるため、2009年度補正予算に約4千億円を計上。鳩山政権がこの方針を引き継いだ。都道贋県の基金を通じて1人当たり月額平均15千円を事業者に交付しており、116月末現在の利用率は83%123月までの時限措置で、介護保険を運営

する自治体や事業者などから存続を求める声が根強い。

 

 

 

介護保険法改正案が可決(11.06.15)

●介護保険改正可決
 6月15日に、24時間対応の訪問介護・看護サービスの創設を目玉とする改正介護保険法が、参院本会議で与野党の賛成多数で可決・成立しました。
 今回の改正の大きな柱は、高齢者が独り暮らしや重度の要介護状態になっても、住み慣れた地域で暮らし続けられるようにするのが狙いとされています。
●24時間対応の新サービス
 ポイントは、24時間対応の新サービスは、ヘルパーと看護師が連携して、定期的に利用者を訪問して短時間介護などを行うほか、要請があれば随時駆けつけます。
●財政安定化基金の取り崩し
 もう一つのポイントは、現在、保険料の全国平均(65歳以上)が月4160円ですが、この保険料の上昇を抑制するため、各都道府県の財政安定化基金を取り崩して、保険料を軽減できるようにしことです。
●介護予防のための生活支援サービス
 その他、介護の必要度が低い軽度者向けに、市町村の判断で介護予防のためのヘルパー派遣や、配食、見守りなどの生活支援サービスを総合的に提供できる制度を創設できることも盛り込まれています。
●今後の焦点=保険料負担と介護職員処遇改善の経費の確保の見通し
 介護事業者にとって、今後の大きな関心は、12年度の介護報酬改定の行方も含め、介護職員の待遇改善経費をどう確保されるかです。
 保険料の水準は、「処遇改善交付金」が般財源で賄われるか否かに左右されます。低賃金が人手不足を招いているとされる介護職員の賃金を月額1万5000円引き上げるための基金ですが、来年3月には予算を使い果たす見通しです。
 厚生労働省の案のひとつとして、交付金の終了時にちょうど3年に1度の改定期を迎えるので、介護報酬を2%アップして、財源を捻出ことも想定されていたようです。
 しかし、介護報酬をアップして交付金分に対応しようとすれば、保険料に直結することになり、保険料が5000円を超えることになるのが確実と言われています。一方、交付金など一般財源を充てると5000円未満にできるので、民主党や公明党などからは交付金継続を求める声が上がっているようです。
 しかし、介護報酬なら保険料もアップし所要税財源は500億円で対応できのですが、交付金なら1900億円かかる見通しで、東日本大震災の影響で財政状況が厳しいと言えます。

介護保険制度10年、「改革へ難題」(10.07.27)

 本日、7月27日の日経新聞を見ると「介護保険10年、改革へ難題」の記事がある。

①給付のあり方【施設】

 介護保険施設や民間の生活支援付き高齢者専用賃貸住宅のあり方

②給付のあり方【在宅】

 24時間対応の在宅サービスのあり方のほか、要介護認定の認定区分の簡素化や利用限度額の見直し

③給付と負担のあり方

 保険料や利用者負担のあり方、給付に投入する税財源の割合

④介護人材の確保と処遇の改善策

 介護サービス事業者の労働法規制遵守やキャリアアップの仕組みを導入するための促進策

 それぞれが重い課題だが、避けて通れないのも事実だ。

今後の介護報酬と制度の改正を考える(09.05.09)

(1)制度は5年ごと、報酬は3年ごとに見直し
 介護保険は、制度見直しが5年に1回、報酬見直しが3年に1回実施されます。2005年に制度改定、2006年に報酬改定がありました。今年、2009年は報酬改定が実施されましたが、次は、2010年が制度改定の年となります。
 介護報酬の改定は、法改正を必要とするものではありません。審議会(社会保障制度審議会)の諮問を通じて厚生労働大臣が決定する公共料金の一つだと言えます。

【改正の年】

報酬

制度

2009

2010

2012

2015

2015

 2015年は、制度と報酬の両方の改定の年となりますので、相当大きな改定が行われる可能性を持っています。
 過去の事例では、2005年の制度改定で「介護予防」の仕組みが導入され軽度の介護度の利用者が介護保険制度から介護予防に以降する制度が打ち出され、それに合わせて翌年の2006年に介護報酬の改定が実施されたことは記憶に新しいことです。
 この改定によって、実質的には訪問介護や居宅介護支援事業などの事業収益は大打撃を受けました。

 

(2)医療報酬の関連も重視する
 もう一つの側面は、医療との連携の側面です。
 医療行為や調剤などに対し、国が定める価格表を「診療報酬」といいますが、この診療報酬は、おおむね2年に1度改定されます。
 当面2010年、2012年と改定が実施されることになります。
 介護保険制度の関連では、2012年の報酬改定がどのようになるのかが注目されていますが、医療報酬との調整が焦点となることは間違い有りません。

 

(3)2015年に向けて大きな曲がり角に
 従って、2012年に向けては医療との連携や医療との棲み分けについて見直しの手が加えられる可能性が大きいと考えられます。
 また、その後の2015年に向けた3年間で、介護保険制度のさらなる抜本的な改正が検討される可能性があります。
 考えられるキーワードは、
① 介護保険の被保険者の年齢を現在の40歳以上から20歳以上へと引き下げる可能性があること。
 このことによって、介護保険料を支払う母数が拡大され、介護財政の基盤が強化できることを狙うものと思われます。
② 上記の①ともあわせて障害者介護を介護保険制度に統合する可能性があること。
 若年者が介護保険料を支払うことになれば、「加齢にともなう給付」としての介護保険制度では、若年者は保険料だけを徴収されることになり、保険制度として保険と給付の統一が実現できないことになります。
 したがって20歳以上の若年者からの保険料徴収と障害者介護との統合は不可分一体の関連性があると言えます。
③ 介護保険の重度化シフトということで、介護度2までの軽度については、介護予防に移行する可能性があること。

 

 いずれにしても、これからの数年間の対応が将来の方向性を決めると言えます。制度と報酬の改定という重要な経営環境の変化には敏感にならざるを得ません。

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