介護事業所の経営と労務管理

介護保険制度10年、「改革へ難題」(10.07.27)

 本日、7月27日の日経新聞を見ると「介護保険10年、改革へ難題」の記事がある。

①給付のあり方【施設】

 介護保険施設や民間の生活支援付き高齢者専用賃貸住宅のあり方

②給付のあり方【在宅】

 24時間対応の在宅サービスのあり方のほか、要介護認定の認定区分の簡素化や利用限度額の見直し

③給付と負担のあり方

 保険料や利用者負担のあり方、給付に投入する税財源の割合

④介護人材の確保と処遇の改善策

 介護サービス事業者の労働法規制遵守やキャリアアップの仕組みを導入するための促進策

 それぞれが重い課題だが、避けて通れないのも事実だ。

加算制度が、「条件付き」に!(09.05.18)

 「介護職員の待遇改善」の錦の旗が、早くも変色し始めています。

 居宅介護支援事業における「認知症加算」と「独居高齢者の加算」制度についての行政の説明会では「単純に認知症や、独居だからということで加算申請は出来ない」と説明がありました。

 「介護の手間がかかっているから加算をつけているのだから、手間がかかっていないのなら加算を申請出来ない」とのことでした。

 いつも思うのですが、行政の手続きで介護保険制度ほど「口頭による通達」と「後出しジャンケン」がまかり通っている領域は珍しいと思います。

 

①不思議な「口頭による通達行政」

 報酬を受け取る基準となるべき事項が、集団説明の場における「口頭連絡」でことが済まされるということ自体が正確さを期すべき行政のあり方としておかしいものです。

 行政の指導は、再現性のある文書で行うのが原則です。

 認知症の方や独居の方のサービスを提供している場合は「加算出来ます」と明示されているにも関わらず、その条件がありました。「手間がかかっていない場合は、加算申請出来ません」ときました。

 では、「手間がかかっている」かどうかの基準とは何なのかがについては、明確に具体的な説明が有ったかというと、これが全く不明確。

 情報が明確に組織的に普及されるためには、集団指導の口頭連絡だけでは不可能なことは当たり前のことです。

 この点が、非常に問題の大きなポイントの一つです。

 

②公明正大さに欠ける「後出しジャンケン」的指導

 介護保険制度が始まった頃に「毎月訪問」の基準も「特段の事情があるならば、翌月でも可能」との説明が行われていました。

 しかし、実地指導に来た職員は、調査のふたを開いて「特段の事情」とは「単に訪問したが不在だった」は違うという見解を説明されてしまいました。

 それなら、そうと早くから明確に説明をしてくれていれば、その基準で行動をしたのですが、実地指導は、後出しジャンケンそのものでした。

 誰が見ても分かる明瞭な基準を出さず、調査の段階で減算となる基準を明示するなどというのは、本当にフェアな行政活動とは思えません。

 今回の「介護の手間がかかっているかどうか」も要注意です。

③「介護の手間」を独自の3基準で検討

 県ケアマネとしては、①2度以上訪問した場合、②新たなサービスを利用するようになった場合、③頻繁な連絡を取った場合という3つの基準としてはどうかと論議しました。

 これを保険者であるところの市の介護保険課宛に質問をしてはどうかということになりました。

 文書で質問し、間違っているなら文書で回答せよと要望する予定です。

今後の介護報酬と制度の改正を考える(09.05.09)

(1)制度は5年ごと、報酬は3年ごとに見直し
 介護保険は、制度見直しが5年に1回、報酬見直しが3年に1回実施されます。2005年に制度改定、2006年に報酬改定がありました。今年、2009年は報酬改定が実施されましたが、次は、2010年が制度改定の年となります。
 介護報酬の改定は、法改正を必要とするものではありません。審議会(社会保障制度審議会)の諮問を通じて厚生労働大臣が決定する公共料金の一つだと言えます。

【改正の年】

報酬

制度

2009

2010

2012

2015

2015

 2015年は、制度と報酬の両方の改定の年となりますので、相当大きな改定が行われる可能性を持っています。
 過去の事例では、2005年の制度改定で「介護予防」の仕組みが導入され軽度の介護度の利用者が介護保険制度から介護予防に以降する制度が打ち出され、それに合わせて翌年の2006年に介護報酬の改定が実施されたことは記憶に新しいことです。
 この改定によって、実質的には訪問介護や居宅介護支援事業などの事業収益は大打撃を受けました。

 

(2)医療報酬の関連も重視する
 もう一つの側面は、医療との連携の側面です。
 医療行為や調剤などに対し、国が定める価格表を「診療報酬」といいますが、この診療報酬は、おおむね2年に1度改定されます。
 当面2010年、2012年と改定が実施されることになります。
 介護保険制度の関連では、2012年の報酬改定がどのようになるのかが注目されていますが、医療報酬との調整が焦点となることは間違い有りません。

 

(3)2015年に向けて大きな曲がり角に
 従って、2012年に向けては医療との連携や医療との棲み分けについて見直しの手が加えられる可能性が大きいと考えられます。
 また、その後の2015年に向けた3年間で、介護保険制度のさらなる抜本的な改正が検討される可能性があります。
 考えられるキーワードは、
① 介護保険の被保険者の年齢を現在の40歳以上から20歳以上へと引き下げる可能性があること。
 このことによって、介護保険料を支払う母数が拡大され、介護財政の基盤が強化できることを狙うものと思われます。
② 上記の①ともあわせて障害者介護を介護保険制度に統合する可能性があること。
 若年者が介護保険料を支払うことになれば、「加齢にともなう給付」としての介護保険制度では、若年者は保険料だけを徴収されることになり、保険制度として保険と給付の統一が実現できないことになります。
 したがって20歳以上の若年者からの保険料徴収と障害者介護との統合は不可分一体の関連性があると言えます。
③ 介護保険の重度化シフトということで、介護度2までの軽度については、介護予防に移行する可能性があること。

 

 いずれにしても、これからの数年間の対応が将来の方向性を決めると言えます。制度と報酬の改定という重要な経営環境の変化には敏感にならざるを得ません。

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