介護事業所の経営と労務管理

今後の介護報酬と制度の改正を考える(09.05.09)

(1)制度は5年ごと、報酬は3年ごとに見直し
 介護保険は、制度見直しが5年に1回、報酬見直しが3年に1回実施されます。2005年に制度改定、2006年に報酬改定がありました。今年、2009年は報酬改定が実施されましたが、次は、2010年が制度改定の年となります。
 介護報酬の改定は、法改正を必要とするものではありません。審議会(社会保障制度審議会)の諮問を通じて厚生労働大臣が決定する公共料金の一つだと言えます。

【改正の年】

報酬

制度

2009

2010

2012

2015

2015

 2015年は、制度と報酬の両方の改定の年となりますので、相当大きな改定が行われる可能性を持っています。
 過去の事例では、2005年の制度改定で「介護予防」の仕組みが導入され軽度の介護度の利用者が介護保険制度から介護予防に以降する制度が打ち出され、それに合わせて翌年の2006年に介護報酬の改定が実施されたことは記憶に新しいことです。
 この改定によって、実質的には訪問介護や居宅介護支援事業などの事業収益は大打撃を受けました。

 

(2)医療報酬の関連も重視する
 もう一つの側面は、医療との連携の側面です。
 医療行為や調剤などに対し、国が定める価格表を「診療報酬」といいますが、この診療報酬は、おおむね2年に1度改定されます。
 当面2010年、2012年と改定が実施されることになります。
 介護保険制度の関連では、2012年の報酬改定がどのようになるのかが注目されていますが、医療報酬との調整が焦点となることは間違い有りません。

 

(3)2015年に向けて大きな曲がり角に
 従って、2012年に向けては医療との連携や医療との棲み分けについて見直しの手が加えられる可能性が大きいと考えられます。
 また、その後の2015年に向けた3年間で、介護保険制度のさらなる抜本的な改正が検討される可能性があります。
 考えられるキーワードは、
① 介護保険の被保険者の年齢を現在の40歳以上から20歳以上へと引き下げる可能性があること。
 このことによって、介護保険料を支払う母数が拡大され、介護財政の基盤が強化できることを狙うものと思われます。
② 上記の①ともあわせて障害者介護を介護保険制度に統合する可能性があること。
 若年者が介護保険料を支払うことになれば、「加齢にともなう給付」としての介護保険制度では、若年者は保険料だけを徴収されることになり、保険制度として保険と給付の統一が実現できないことになります。
 したがって20歳以上の若年者からの保険料徴収と障害者介護との統合は不可分一体の関連性があると言えます。
③ 介護保険の重度化シフトということで、介護度2までの軽度については、介護予防に移行する可能性があること。

 

 いずれにしても、これからの数年間の対応が将来の方向性を決めると言えます。制度と報酬の改定という重要な経営環境の変化には敏感にならざるを得ません。

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