2025年7月号
「賃上げできる企業づくり」第2回
ゲスト:株式会社アクセル 代表取締役 櫛橋 範行 様
近年、社会全体で最低賃金の引き上げが大きな話題となっています。
そうした流れの中で、「賃上げができる企業」をどのように構築していくべきか、多くの経営者が模索しています。
今回は、社員の声をもとに福利厚生の充実に注力し、働きやすい職場づくりを推進している株式会社アクセルの櫛橋社長に、その取り組みについて伺いました。
一部抜粋してご紹介いたします。
(※インタビューの詳細内容は割愛します)
アクセルの賃上げの取り組み
かつては1年単位の変形労働時間制を採用し、月に2〜3回の土曜出勤を実施していましたが、2025年からは土日休みの完全週休2日制に移行しました。
その代わりに、1日の所定労働時間を7時間50分から8時間へと10分延長しています。
従前と2025年の働き方の変化については下記の表のとおりです。
~2024年 | 2025年~ | |
---|---|---|
年間休日 | 102日 | 127日 |
1日の所定労働時間 | 7時間50分 | 8時間 |
年間所定労働時間 | 2060時間 | 1904時間 |
月平均所定労働時間 | 171時間40分 | 158時間40分 |
結果として、所定労働時間が1日あたり10分増えたものの、年間休日は25日増加。月平均労働時間は10時間以上削減されました。
それにもかかわらず、給与支給額は据え置きとしたため、時給換算で8%の昇給を実現。
これに加えて、毎年の定期昇給5%を合わせ、合計13%の昇給となりました。
賃上げに至った背景
経営指針の毎年の見直し時に、短期的な計画を社員とともに検討する中で、ある社員から「10年ビジョンも大切だが、まずは身近な福利厚生について考えてほしい」との意見がありました。
その中でも特に要望が多かったのが「残業削減」と「週休2日制」。こうした声を受け、労働時間削減に本格的に取り組むこととなりました。
週休2日制導入のプロセス
① 経営者自身がまず実行できるかを確認
まず最初に、櫛橋社長自身が「土曜日に休めるかどうか」を検討しました。
社員が休んでいても経営者が働いていれば、気を使って休みにくくなるのではとの配慮からです。
② 業務の棚卸と効率化
月2回の土曜出勤がなくなると、約16時間の労働時間削減になります。業務の棚卸を行った結果、「土曜にしかできない業務はない」と判明。
月~金の平日業務の効率化を図ることで、売上を維持しながら労働時間を削減する方針を固めました。
③ 社員への説明と納得形成
所定労働時間の10分延長に対しては反対意見も予想されましたが、休日数の増加によるメリットが大きく、反対は一切なかったそうです。
週休2日制の導入によるメリット
① 生産性の向上
土曜出勤がある頃は、平日の業務集中力が下がっていたことに気づいたそうです。
完全週休2日制となったことで、効率的に業務へ取り組む意識が社内全体に浸透し、生産性向上につながりました。
② ワークライフバランスの確保
平日は仕事に集中し、土日はプライベートを充実させるというメリハリのある働き方が可能になりました。
櫛橋社長ご自身も、趣味のサーフィンに出かける回数が増加。プライベートの充実が、仕事へのモチベーション向上にもつながったと語ります。
所定労働時間の短縮も「賃上げ」である
「賃上げ」とは単に給与額を引き上げることにとどまりません。
所定労働時間の短縮や休日数の増加は、実質的な時給の向上を意味し、従業員の働き方や意識にも良い影響をもたらします。
アクセル社の取り組みは、給与と働き方の両面から「本質的な賃上げ」を実現した好例といえるでしょう。
人手不足への新たな解決策 ― 訪問系サービスに広がる外国人材の活用
◆外国人介護人材(技能実習生や特定技能外国人)の訪問系サービスの従事について
2025年4月から、技能実習生や特定技能外国人も一定の条件のもとで訪問系サービスに従事できるようになりました。
これは、介護業界の人材不足の解消に寄与するとともに、受入事業所にとっても新たな戦力を確保できる大きな機会となります。
今後の人材確保の選択肢のひとつとして、外国人材の受け入れを前向きに検討することは有効な対応策です。
適切な研修や支援体制を整えることで、外国人介護人材の定着やサービスの質の向上にもつながります。
◆外国人介護人材が訪問系サービスに従事する際の要件
対象サービス
訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護、訪問型サービス(総合事業)など
外国人本人の要件
- 介護職員初任者研修課程を修了していること。
- 日本国内で1年以上の介護業務の実務経験があること。
受入事業所の要件
- 外国人介護人材に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと。
- 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと。
- 外国人介護人材に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること。
- ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること。
- 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと。
1から5の事項を適切に履行できる体制・計画等を有することについて、事前に巡回訪問等実施機関に必要な書類を提出し、適合確認書の発行を受けることが必要です。この書類がない場合、訪問系サービスへの従事は認められません。
加えて、利用者やその家族に対して、外国人介護人材が訪問する可能性があることや、実務経験等について事前に説明し、書面で同意を得る必要があります。
◆想定される働き方のケース
例:施設系→訪問系サービスへの配置
技能実習生:インドネシア出身Aさんの場合(原則転職不可・同一事業所内での配置転換)
- 認知症対応型共同生活介護事業所で技能実習2年目。
- 介護職員初任者研修を修了している。
- 同一法人内に訪問介護事業所があり、法人がAさんについて適合確認書を取得。
- 配置転換として同一法人内の訪問介護に従事する。
※2027年より技能実習制度に代わって創設される予定の育成就労制度でも、一定の条件の下で訪問系サービスへの従事が認められる見込みです。
例:通所系→訪問系サービスへの配置or転職
特定技能外国人:ベトナム出身Bさんの場合(分野内転職可)
- 通所介護事業所で特定技能2年目。
- 介護職員初任者研修を修了している。
- 同一法人内に訪問介護事業所があり、法人がBさんについて適合確認書を取得。
- 配置転換として同一法人内の訪問介護に従事する。
- 介護分野での他法人への転職も可能。
(訪問系サービスに従事する際には転職先の法人でも適合確認書の取得が必要)。
今回の制度改正により、介護保険の指定を受けていないサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームでも、訪問介護として外国人介護人材によるサービスを受けることが可能となりました。これにより、外国人材の活躍の場はさらに広がることが期待されます。
その他ご不明な点がございましたら、合同経営にご相談ください。