4訂版の発行にあたって

本書は、今回が4度目の改訂版となります。2009年に初版が発行されてから7年を経過しました。本年の介護保険制度と報酬の同時改定によって、介護事業は「激変と消滅」の時代に突入しました。

今回改定は、介護職員処遇改善加算制度の対応策を主眼におきました。加算Ⅰを選択すると制度平均で27,000円が支給されますが、極めて大きな金額です。

介護職員処遇改善加算を、「新型」介護職員処遇改善加算と表現しました。加算制度の骨格は従来の延長線上です。しかし、歴史的な転換点を通過しました。

その理由のひとつは、「キャリアによる差別と選別」の始まりとなったことです。

介護職員処遇改善交付金制度の初期は「結婚したから生活のために寿退職する」と前途有望な男性介護職員が次々に退職していくことを解決するために昇格昇給の道筋をつける、という趣旨の制度の説明がおこなわれていました。

しかし、今回の改正では、在宅限界を高める地域包括ケアシステムの構築を打ち出し、中重度の利用者に特化する方向付けをしました。そのために、優れた人間性と高い専門知識・技能をそなえた介護職員の育成が急務とし、キャリアアップに熱心な事業所には新たな加算Ⅰが選択できることとしました。キャリアアップに熱心な事業所には手厚く、それ以外はそれなりにされることなりました。

もうひとつは、2025年をめざし、さらなる介護報酬の下方修正のための「救済」(調整弁)の役割を果たすものとなったことです。

厚生労働省は「事業の継続を図るために、介護職員の賃金水準を下げる必要が有る状況」の届出において「法人の収支(介護事業に限る。)について、サービス利用者数の大幅な減少などにより経営が悪化し」とし、単価改定による減収は、経営環境の悪化と位置づけないという見地を示しました。

基本報酬で、事業を維持するギリギリの単価設定をし、すぐれた職員を育てる仕組みを構築することで加算Ⅰを得られるという構図で、大変厳しい制度です。

全国の人事労務に関わるみなさんが、本書で提供しているノウハウなどを参考に介護職員処遇改善加算Ⅰを選択するとともに、介護職員のキャリアアップに力を発揮してもらえる一助になればと思います。

2025年にむけて、経営の維持・発展をめざすご支援の本となれば幸いです。

2015年4月 著者