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同友かがわ(2006年5月号)に掲載されました。

同友かがわ(2006年5月号)の、Hot Messageに掲載されました。

▲ 同友かがわ(2006年5月号)
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「喜びは、創りだすもの」
「仕事は楽しくなければならない」

香川県ケアマネージメントセンター(株)
代表取締役 林 哲也氏

 

 

人生観も仕事観も、シンプルで明瞭。しっかりした経営理念で二つの会社の代表取締役を務める林さんは、同友会でも活躍が期待される人。
会社経営と同友会活動について、お話を伺いました。

 

 

(同友かがわ2006年5月号掲載)

―林社長は社会保険労務士として独立されたわけですが、それ以前はサラリーマンだったとお聞きしていますが、どんな経緯で独立をされたのでしょう。

それまで勤めていた事務所を辞めたときに、知り合いの税理士さんに”畑違いの仕事だけれどもやってみないか“と声をかけられました。とても親切な方で、私としては救われたといいますか、喜んで勤めさせていただきました。そこから社会保険労務士の仕事をしている事務所に移り、そこで資格を取得して開業という経緯ですが、そもそも私自身、結構わがままなところがあるので、独立した方が向いていると思い開業に踏み切りました。三十代後半でしたが仕事には恵まれていたと思います。

―ところで現在の会社の形態はどんな形になっていますか。

会社が二つあります。屋台骨の方は合同経営で、メンバー十九人の事業です。もう一つは香川県ケアマネージメントセンター(株)で介護保険のケアプラン作成の仕事で、現在ケアマネージャーが七人います。(株)合同経営は平成七年、香川県ケアマネージメントセンター(株)は平成十一年の開業です。合同経営開業当初は社会保険労務士の仕事だけでしたが、行政書士や税理士など、みんなで一緒に仕事をということになり、現在のような形になったのですが、最初の頃はたしかにお互いに助け合っていこうという雰囲気がありました。でも、実際にスタートしてみると、専門家が集ってそれぞれのサービスを提供するところにお客さまは魅力を感じてくださったようです。例えば、税理士さんなどは社会保険労務士・行政書士の資格も持っている方がたくさんいますが、そういう事務所の場合は芯になる先生が一人おられてその方の資格で職員が動きますが、私どもの事務所は、それぞれが専門の資格を持ち、それを深めていくパターンなので実際の内容は異なると思います。難しいところはありますが、お互いが対等の立場で仕事をしています。

―たしかに難しいでしょうね。とくに十九人もおられると結構凸凹があったりするんじゃないですか。

ありますね。それが悩みの種でもありますが、逆に一番面白いところでもあります。お互いに刺激し合って今までやって来たように思います。試行錯誤を繰り返しながら今日まで運営を続けてきましたが、その中で生み出されたものは、結局同友会のいっている理念経営というか、夢の共有ではないかと思います。よく「資格者=一匹狼」と思い込まれている方がいますが、高度に発達した近代社会での資格者の仕事の在り方は単純ではありません。私どもの仕事はベースには日本国憲法を背景にしたものであり、実際に業務をする相手の一つは国家権力になります。そうすると一匹狼では系統的な対策が難しくなります。その上、私どものクライアントは法人なので、一つの資格分野で複数メンバーで対応しなければ、お客さまに対する真面目にサービスを提供しているとはいえません。

―そうすると、みなさんが持たれている資格というのはどんなものですか。それからなぜケアマネージメントセンターを設立されたのですか。資格と何か関わりがあるのでしょうか。

先ほどもお話しましたが、税理士、行政書士、社会保険労務士の三つがベースです。行政書士や社会保険労務士の業務は、なかなか掴みきれていない方が多いわけです。結局、私どもがケアマネージメントセンターを立ち上げたのもそのあたりに理由があります。私どもの歴史の前半期の一つのポイントは、介護保険に着目したことです。大きなエポックになっています。介護事業はかつては貧しいお年よりを支えるという福祉政策、措置政策でしたが、そういうところに二〇〇〇年から民間が参入してもよくなりましたが、いずれはそこに民間が大量に事業参入するだろうということで、一九九八年から計画的に取り組みをはじめました。ケアマネージメントセンターは事業所に対するサポートを目的に設立しましたが、介護の事業所に対して行政書士的な役割をはじめ、人事労務など、いわゆるクライアントとして業界を見たことがよかったのだと思います。それから新規創業も対象になっています。

―そうですか。クライアントのターゲットを決め、それに対するメインになるケアマネージメントをやっていくということですね。

そうです。そしてそれをきっかけに、色々な分野に業務を広げ、深めていきました。今から十年ほど前には建設業を中心に取り組みを進めたこともありましたが、それ以上に新規創業で社会貢献する介護保険関係の事業所に力を入れる方に魅力を感じました。

―ケアマネージメントセンターは新しい分野なので立ち上げにはご苦労があったのではないですか。それから特徴についても少しお話をお願いします。

介護保険の勉強からはじめましたが、独立系のケアプランをつくる事業所であり、サービスは持たないというのが私どもの魅力だといわれています。私どもで働いているケアマネージャーがケアプランの作成だけに力を入れることができるのが魅力の一つですね。例えばどこかの事業所のサービスをケアマネージャーに押し付けることはありませんので、一緒に仕事をしているメンバーもあまり気持ちに負担がなく、みんな長く勤めてくれています。

―先ほど同友会の話が出ましたが、林さんにとって同友会はどんな存在ですか。

たぶん同友会に入会していなければ、私どもの事務所は今とは全く別のものになっていたと思います。おそらく儲け主義に走っていたのではないでしょうか。今から六年ほど前に中同協の労働委員会に定期的に参加させてもらいましたが、そこで勉強させてもらったことが大きく影響していると思います。収穫は大きかったですね。あのとき、赤石さんの著書、『人間力経営』『経営理念』を読んでショックを受けました。あの二冊との出合いが私を変えたと思います。それまでは正直、経営指針の意味が分かっていなかったように思います。最近は事務所の取締役会では『人間力経営』の読み合わせをしています。『人間力経営』は、経営者論、幹部論ですが、分かりやすくて本当にはっとするようなことがたくさん書かれています。

―たしかに、経営者には考え方や行動に非常に個性というか、違いがありますよね。そういう意味で経営者はしっかりとした行動が求められますから、ある程度の線は持たないと難しいと思いますね。

私もそう思います。私の場合は、経営者として大切なことは、それぞれのメンバーが仕事を楽しめる状態に持ち込むことではないかと思います。そして、ある意味で変わらず、今のままの事務所を続けて行き、新しい人が入って来ても、「変わらない事務所」でいきたいなと思っています。

―ところで社員さんの男女の比率はどうですか。

圧倒的に女性が多いですね。ケアマネは一〇〇パーセント女性ですから、どうしても男性が少なくて、男性社員は二、三人という時代がしばらく続きましたが、ここ数年で男性社員が少し増えてきています。

―みなさんこちらで資格を取得されるわけですか。

入社してから資格を取る社員もいますし、資格を持っている社員もいます。私どもの事務所では資格取得をすすめていますから、結構頑張って勉強しているようです。ただ資格がなくても待遇はあまり変わりません。四年ほど前までは国家資格者集団という表現をしていましたが、今は専門家集団に変えています。資格は持っていなくても現場に精通した社員がいますから、専門家集団の方がふさわしいと思います。

―経営指針書は毎年更新しているわけですか。

根本的に変えることはしていませんが、毎年少しずつ変わっています。一年間を振り返り、例えば事件などがあれば、どうするかを検討します。十一月に総会を開き、そこで確定させますが、毎年、五月頃から前期総括をして、そこで次期の経営指針の検討に入ります。ですから丁度今、議論がはじまっているところですが、その口火を切ったのがみなさんもご存じのネッツトヨタ南国の「しあわせアンケート」です。

―経営理念を簡単に説明していただけますか。

経営理念は「喜びは、創りだすもの」です。 そして使命として「憲法を経営とくらしの中につらぬく専門家集団」「問題解決とワンストップサービスを実現する専門家集団」「地域・家庭を愛し、必要とされる専門家集団」です。

―同友会の「経営指針を創る会」と「労使問題全国交流会」について少しお聞かせいただけますか。

 「経営指針を創る会」についてですが、従来の経営指針については、経営研究委員会で関わりがありましたが、いわゆる成文化運動は経営研究委員会との関わりの中で頑張って取り組みはしてきましたが、もう一つ煮え切らないものがありました。なぜだろうかと振り返ってみると、文章を書く運動をしているんですよね。それぞれの頭の中にある理念をとにかく書いてみましょうというのが当時の取り組みだったと思います。これは理事会でもその見解を説明していますが、それで何か気付きがあるのかというと、思っていることが書けてよかったということはありますが、お互いの経営のところに会員同士が関わるというか、”それはちょっと違うんじゃないですか“と言い合うことができるような、関わりができてないところに一種の歯がゆさがあったのかなと思います。そういう思いのある中で、滋賀同友会がやっている「経営指針を創る会」を見学する機会に恵まれ、昨年春から夏にかけて、出かけて行きました。そうすると、文章を書くのはあくまでも宿題であり、発表後にその中身と実際の経営について意見交換をする場でした。「創る会」は「書く会」ではないので、発表したことについて、助言者が本音で、言い難いことも言いますし、例えば”あなたは自動車屋さんを経営してるけれども本当にその仕事が好きなんですか“と、問いただすわけです。労使見解を踏まえた上で、社内の従業員をパートナーとしながら、お互いが人間としての誇りが持てるような仕事をするということを、会の前段で同友会理念の学習を行い、それを踏まえての理念の検討を行っていました。従業員を大事にして、働いてよかったと言えるような職場づくりをどうするかという論点で理念を考えてほしいということなので、相当にシビアな話になっていましたね。五人が一チームで、徹底的に討論するわけです。今回は同様のことを行う予定です。助言者も受講者も両方がしっかり勉強しますから、これを出発点に、同友会理念を体現して頑張っていこうという会員を増やしていきたいというのが「創る会」の一つの特徴です。

―最近は若い会員さんが増えていますから、参加すれば随分と勉強できると思いますね。

その通りです。大いに変わってくれるといいのですが。

―ではもう一つの「労使問題全国交流会」についてお聞かせください。

今年の八月に香川で開催予定です。以前、愛媛県で開催されたことがあるようですが、この会は労使見解について勉強、検討する会です。この問題を語るときは、同友会と他の団体との違いが明瞭に出ます。「共に生きる」も同じですが、商工会やロータリークラブ、ライオンズクラブ、JCなど経営者団体はたくさんありますが、労使問題について真面目に考えることができるのは同友会だけではないかと思いますし、またこの点が同友会の一番いいところではないでしょうか。同友会は単純に労働組合を敵対視するのではなく、全体としてリードしながらパートナーシップをいかに発揮するかを考えてきましたから、それが労使見解に集約されていると思います。ただ、今の労使問題は組合対策ではなく、職場で生き生きと仕事をやってもらうための労使の関係について継承されてきている面があります。実質的なところでの考えが柱になると思います。同族企業や個人商店の経営者が同友会には多いと思いますから、同友会の労使見解を通じて組織経営を学ぶことになるのではないでしょうか。他人労働者と経営者とはどういう折り合いで経営を成り立たせていくかという問題です。例えば、他人労働者も家族一員だという経営者がいますが、でも社員はそうは思っていないはずです。自分たちが一生懸命仕事をしても、いずれは経営者の息子さんがやって来るという思いが常にあるわけです。それを赤石さんが説明してくれましたが、家族経営者と他人労働者の思いの開きはとても大きいものがあります。

―労使問題交流会を通じて香川同友会に求めるもの、訴えるものはございますか。

労使見解の今日的な中身の理解を促進することが最大の狙いです。労使という言葉がいいかどうかの議論はあるとしても、他人労働者といかに職場づくりをしていくか。人間としてお互いが働きやすい職場をつくっていかなければならないということを言っているのが同友会だということを理解してくれる人をどれだけつくるかが今回の会の目的です。

―赤石さんの言葉は本当に的確に指摘していますね。

そうですよね。中小企業の経営者の公私混同をこころよく思っていない社員がいることを忘れてはいけませんし、ましてや家族的経営をと言っても、社員は家族だとは思っていないはずです。それを認識することから労使関係の修復がはじまるというのが赤石さんのお話ですが、これは私にとっては衝撃的でしたね。こういう問題として読み取っていただけたらと思います。

―今日はどうもありがとうございました。

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