最近の時間外労働に関する報道に思う (16.12.28)
先日、音楽業界の某大手企業が従業員に違法な時間外労働をさせていたことにより、労働基準監督署から是正勧告を受けたという報道がありました。「僕らの仕事は自己実現や社会貢献みたいな目標を持って好きで働いている人が多い」、「好きな仕事を好きなだけできる」と働く本人が喜んで仕事をする...結構なこととも思われますが、事業主が言うことではないですね。社長様に悪気が無いとすれば、「社長も従業員も好きなことにアツくなれる仲間」と考えておられるのでしょうか。好きなことにアツくなっている従業員の健康やメンタル面に配慮して、適正に管理することが事業主の義務なのですが、「仲間意識」が強くて事業主として必要な視点を忘れておられるのでしょうね。「労働環境や従業員の健康に配慮する」事業主の大事な視点を忘れて「従業員が好きなだけ仕事をできる」ことに関係者全員が納得していると思い込んでいる(若しくは強弁している?)ことが社長様の主張のそもそもの誤りだと思います。
また、この社長様の仰るとおりに「時間の上限無く好きな仕事をする自由」を認めると、その瞬間から『際限なく仕事する人=一生懸命仕事に取り組んでいる人』の図式が出来上がってしまうため、「定時で仕事を切り上げて自分の時間、家族との時間を確保する権利」は葬り去られます。なので、「役所に好きなだけ仕事をする人の足を引っ張る権利は無い。」という意見はとても危険です。
無茶な働き方をさせていることを、「やりがいがある」、「社会貢献」、「自己実現」、「学び」、「成長」といった美辞麗句でごまかすのは、ブラック企業の常套手段ですので注意すべきでしょう。
(田村 大介)