r>g (15.1.28)
昨年から日本でもトマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」が話題沸騰である。所得と富の分配に関する問題を扱った本だ。世界10数ヵ国で累計100万部を突破しベストセラーとなっているという。日本でも昨年暮れに発売され13万部も売れているそうだ。いずれにしても経済書としては異例のことらしい。
さて、この本のエッセンスはというとこういうことである。r>g。rは資本収益率、gは経済成長率である。過去200年の税務統計データを分析してみると、資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回っているというのだ。つまり富める者がその資産によって得る収入の方が、われわれ労働者の労働によって得る収入よりも多く、富める者はますます裕福になり、われわれ労働者はいつまでたってもそうした者たちと同じように裕福にはなれないということを表している。そしてその経済的格差の拡大が、社会や経済を不安定にしているというのだ。たしかに今、世界中で起きているテロや紛争の根底には、必ずこうした経済的格差や教育の格差の問題が存在する。
そうした内容に興味を引かれ、正月休みに読んでみようかと思ったが実のところまだ読んでいない。というのもなんとこの本700ページ超もあり、価格は5940円もする。よほどの意志をもって臨まない限り読み切れるものではない。ところが少し前、テレビで、東京のとある場所で開かれているこの本の読書会の模様が紹介されていた。様々な職業の方が参加されており、インタビューを受けた20代後半と思しき女性がこう答えていた。「自分は派遣社員で、常に格差を感じている。格差のことについて勉強しようと思ってこの読書会に参加した」と。手に持つピケティ本には若い女性らしいカラフルな付箋がたくさん貼られていた。
今起こっている問題を解決したいなら、まず原因を正しく知らなければない。この女性の学ぶ姿勢に感心した。ページ数が半端ない・・・。価格が高い・・・。・・・自分は田舎者だと痛感した。
(松本 秀紀)