秩序だけ手に入れることはできない (12.3.14)
東日本大震災から1年が過ぎた。本来は、復興のための公営住宅や店ができるはずの公有地に、今もがれきが積まれ、その処理が遅々として進まず、東北3県の復興の足かせとなっているという。
自然界に秩序が発生したときは、同じ量だけどこかに無秩序が排泄される。秩序と無秩序は対になっていて秩序だけ手に入れることはできない、ということを解剖学者の養老孟司先生がおっしゃっていたのを思い出した。
がれき処理問題もこういう見識のもとに考えなければならないのではないだろうか。この問題は日本全体のこととして取り組まなければならない。各自治体が今ある秩序を維持するために、このままがれきという無秩序の受け入れを拒み続けると、被災地はいつまでも秩序を取り戻せず復興できない。つまり、日本全体の秩序を取り戻そうとしている今、各自治体は、がれきという無秩序の解消のために、応分の負担を負わなければならない状況なのである。
大部分の人には理解できる話ではないだろうか。ではなぜ、広域処理は進まないのか。簡単な話である。政府も、政治家も、東電も信用できないからである。そのような人たちから、このがれきは放射能に汚染されていませんと言われても信用できないからである。原発問題にとどまらず、これまで様々な問題に関し、国民への説明をないがしろにしてきた代償であろう。
「秩序だけ手に入れることはできない」・・・・毅然と国民に説くことのできるリーダーの出現が望まれる。
(松本 秀紀)